M&A主要スキームの概要!株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割の税務面・法務面の特徴を比較解説(後編)

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【後編】M&Aには、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割等、複数の取り得る形態(スキーム)があり、それぞれに税務面・法務面の特徴が存在します。

どのスキームを選択するかは、買収後の事業運営への影響はもちろん、買収を完了するまでの手続や買収取引に関連して生じる税金の額にも関わってくるため、M&Aの事前準備の段階でよく検討する必要があります。

本稿では前編・後編の2回にわたり、それらの税務面・法務面での違いとともに、主要スキームのメリット/デメリットについて解説します。

本稿は後編として前回に続き、税務・法務を中心とした制度上の比較を行います。

後編-M&Aスキームの制度上の比較

税務面の比較

M&Aのスキームを検討するにあたっては、取引の実行前後に生じる税金の種類や金額、節税効果の有無が重要な着目ポイントのひとつとなります。

どのスキームを選択するかによって、税務上ののれんと呼ばれる資産調整勘定の発生や、税制適格組織再編に該当することによる課税の繰延、対象会社の繰越欠損金引継の論点等があります。

以下にまとめているのは税務上の論点全てを網羅したものではないですが、M&Aに伴い生じる税金のうち主要なものを例示します。

  株式譲渡 事業譲渡 合併 会社分割
譲渡損益課税
(対象会社)
課税なし 課税あり 課税なし 適格の場合は課税繰延、非適格の場合は課税あり
譲渡損益課税
(対象会社株主)
課税あり 課税なし 適格の場合は課税繰延、非適格の場合は課税あり 適格の分割型分割の場合は課税繰延、非適格の分割型分割の場合は課税あり
税務上ののれん 計上されない 計上される 非適格の場合は計上される 非適格の場合は計上される
対象会社の繰越欠損金 対象会社の利益に対して使用可能 引き継げない 適格に該当すれば使用可能だが、引き継げない場合が多い 適格に該当すれば使用可能だが、引き継げない場合が多い
消費税 非課税 課税 対象外 対象外
不動産取得税 対象外 課税 非課税 原則課税、ただし一定要件を満たすと非課税
登録免許税(不動産所有権の移転登記) 対象外 課税 課税 課税


法務面の比較

スキームを検討する際には、M&Aの実行にあたっての手続の手間やそれに伴い生じるコストも大きな論点になります。

M&Aの実行にあたっていくつもの法定手続が必要とされているのは、株主や経営者が変わることによって株主・債権者・従業員等の関係者での損失発生や権利の侵害を防止することが背景にあります。

スキームによって、譲渡対象・譲渡主体・法的形式(包括承継 or 特定承継)等の性質が異なるため、それぞれの性質に合う内容で、会社法や金融商品取引法その他諸法令が一定の措置を定めています。

  株式譲渡 事業譲渡 合併 会社分割
譲渡対価 現金 現金 柔軟に決定できる(現金、株式、その他) 柔軟に決定できる(現金、株式、その他)
株主総会特別決議 原則不要
(重要な子会社株式を譲渡する場合は必要となる場合がある)
事業の全部または重要な一部の譲渡の場合には原則必要 原則必要 原則必要
反対株主の買取請求権 なし あり あり あり
債権者保護手続 不要 各取引先からの個別承諾が必要 官報による公告と個別催告が必要 官報による公告と個別催告が必要
労働者保護手続 法定手続なし 特定承継であるため従業員の個別同意が必要 包括承継される(労働契約承継法の適用なし) 包括承継される(労働契約承継法の適用による労働者保護手続が必要)
金融商品取引法上の規制 対象会社が上場会社等の場合はTOB規制の対象となる場合あり 重要な規制なし 重要な規制なし 重要な規制なし
許認可 引き継がれる 引き継がれない
(再取得が必要)
再取得の要否は許認可ごとに判断 再取得の要否は許認可ごとに判断
簿外債務引継リスク 存在する 特定承継であるため遮断可能 包括承継であるため遮断できないリスクがある 包括承継であるため遮断できないリスクがある


各スキームの基本的なメリット/デメリットの比較

各スキームには、異なる税務上の取り扱いが定められており、また、法的な性質から権利義務の承継に関する定めや関係各社の保護手続が置かれています。
それらスキームの特徴を相互に比較した場合、主に以下のようなメリット/デメリットがあると言えます。

M&Aには常に最善となるスキームというものはなく、案件の状況を当てはめて個別に検討していくことが必要です。

 

  メリット デメリット
株式譲渡
  • 権利義務がそのまま承継される
  • 許認可の再取得が不要であり、比較的スムーズに事業を継続できる
  • 手続が簡便
  • 買手にとっては負債や簿外債務を切り離せない
  • 一部事業のみを買収したいケースでは目的に合わない場合がある
  • 買収対価は現金のみ
事業譲渡
  • 買収/譲渡対象を選別できる
  • 買手にとっては債務や簿外債務の引継ぎを回避できる
  • 税務上ののれんによる節税効果がある
  • 許認可の再取得が必要
  • 取引先や移管対象従業員から個別に同意を取得する必要がある
  • 買手の一事業として受け入れることが通常であるため経営統合にあたって多くの検討論点がある
  • 買収対価は現金のみ
合併
(吸収合併)
  • 対価に株式を用いれば現金を用意する必要がない
  • 権利義務が包括的に承継されるため取引先や従業員の個別同意が不要
  • 税制適格要件を満たせば消滅会社の繰越欠損金が使用可能
  • 負債や簿外債務を引き継ぐリスクがある
  • 許認可の種類によっては再取得が必要
  • 買手に吸収される形で受け入れるため経営統合にあたって多くの検討論点がある
  • 株主・債権者保護に関する法定手続がある
会社分割
(吸収分割)
  • 対価に株式を用いれば現金を用意する必要がない
  • 権利義務が包括的に承継されるため取引先や従業員の個別同意が不要分割対象を選別できる
  • 新設分割+株式譲渡の組み合わせで他社に対する事業の切り出しが行いやすい
  • 負債や簿外債務を引き継ぐリスクがある
  • 許認可の種類によっては再取得が必要
  • 株主・債権者保護に関する法定手続がある
  • 移管対象の従業員保護に関する法定手続がある


まとめ

本稿では、前編・後編に分けて、M&Aの主要スキームについて、概要および制度上の取り扱いの違いについて説明しました。

スキームを検討する際には、取得対象、売手となる主体、譲渡対価、対象会社株主の譲渡後の関与方針等の要素を検討し、自社や相手の目的に見合う最善の探していくことが重要ですが、何が優先されるかは当然ながらケースバイケースと言えます。

スキームによっては、取引実行前後や将来期間に亘って負担することになる税金の金額に大きな差が生じることや、必要となる法定手続の内容・量およびその対応に要するコストに違いがあります。

それらの違いを十分に整理した上で最善のスキームを検討することは、結果としてリスクの軽減やスムーズな取引の実行につながりますので、専門家によるサポートの活用をご検討いただければと存じます。

当社でも、スキーム検討を含む全体的なM&Aプロセスのサポートが可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。


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