デュー・ディリジェンス(DD)とは?M&Aの実施判断に重要なプロセスの基礎を解説!

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デュー・ディリジェンス(DD)は、M&Aにおけるストラクチャー検討、株式価値評価、契約交渉、PMIの各領域の検討に反映すべきリスクを識別するプロセスであり、M&Aの実施判断にも大きな影響を及ぼす重要な実施事項です。

M&Aは異なる事業や歴史を持つ企業同士がひとつの企業グループになる取引であり、その中で相手を深く知り、買収の実行が可能か否かを判断するフェーズであるDDはM&Aになくてはならないと言えます。

実際にM&Aの失敗事例と言われるケースでは、DD不足が原因と説明されることも多々あります。

中小企業同士のM&Aでは、すでにお互いをよく知っているという理由や、マッチングの結果ようやく希望する相手が見つかり友好的に進めたい、または一刻も早く完了させたい事情があるといった理由からDD省略されてしまうケースも多いですが、実際にM&Aの実施を検討される際は、DDがどのように行われて、どのように案件の中で役立つかを覚えておくとよいかもしれません。

本稿では、DD実施の目的や実施手順、DDで発見した情報の使い方について概要を見ていきます。

DDの目的

DDとは、M&Aの買手が買収に関する判断を行うために、売手や対象会社の協力を得ながら、対象会社に関する情報の収集や分析を行う調査プロセスのことを言います。

DDにおいて開示されるのは譲渡対象となる会社や事業に関する機密情報であるため、売手および対象会社の協力が必須であり、通常は基本合意が行われた後の案件中盤で実施することになります。

買手は主に以下の事項を目的としてDDを実施します。

  • 詳細情報の開示を受けて相手の会社や事業のことを深く知るため
  • 買収後の経営体制や経営戦略の検討
  • シナジーを含む将来性の検討
  • 潜在的な負債や簿外債務の有無およびそれらから生じ得るリスクの回避
  • 買収提示価格(バリュエーション)への反映
  • 最終契約への反映
  • 買収後の経営統合(Post Merger Integration: PMI)に関する、事業運営・ガバナンス体制・人事制度・IT等に関する要対応事項の洗い出し

DDは通常2~4週間(最短で1週間や土日2日間で集中的に行われることもある)の限られた時間の中で実施することになるため、あらかじめポイントを絞っておくことが望ましいです。

DDの事前または実施期間中において、M&Aの実行において譲れない条件等を整理した上で、DDにおいて当該事項を確認することやその後の契約交渉に臨むことが、M&Aに期待する効果を最大限に得るためには重要なポイントとなります。

M&A失敗の原因とDD

M&Aが成功か失敗かという判断には明確な基準がないものの、一般に失敗事例と言われているものは、買収価格がシナジーに見合わず高すぎる、簿外債務の存在に気付かず買収後数年後に多額の損失が生じた、対象会社のガバナンス体制に不備があり不正が隠されていたといった原因が存在することが多いです。

中には経済環境の変化や突発的な事故・災害によって損失を被るような、外部環境に左右されてしまう事例はありますが、以下のような例では十分にDDを行うことでリスクの軽減もしくは買収の中止を判断可能な場合があります。

■ 対象会社の選定誤り
シナジーを十分に吟味せず、持ち込まれた案件を安易に進めてしまう、DDの実施不足による負債・簿外債務の看過

■ 相当な割高価格での買収
シナジーの検討や事業計画の分析が不十分

■ DD・契約交渉には想定していなかった損失の発生
DDの実施が不十分、契約交渉で相手の主張に押されて進めてしまう

■ 想定していたシナジーが発現しない
シナジー創出に向けた統合案や経営体制の検討不足

■ 対象会社のガバナンス不足
DDや契約交渉時において、対象会社のガバナンス体制の検証や取引後の経営体制についての相互認識が甘く、ガバナンスの改善が行われない

■ キーパーソンの流出
人事DDにおけるキーパーソンの見極めやリテンション施策の不足

将来に不測の事態が発生することは完全には排除できないものの、ある程度はDDの過程で買収対象となる会社や事業の問題点は見えてきますので、効果的なDDの実行により、それら問題点に対する対策を取ることは不可能ではありません。そのくらいにDDはM&Aにおいて大事なプロセスとなります。

DDの調査範囲

DDの調査範囲は、対象会社の規模、スキーム、案件の性質等に応じて決定することになります。

実施する分野としては、事業・財務・税務・法務・人事・IT・環境・知的財産等が考えられます。

事業・財務・税務・法務のDDは広く行われる分野ですが、例えば対象会社が製造業で工場を有する場合であれば、環境DDとして土壌汚染の有無を調査したり、知財や特許の保有が対象会社の強みであれば知的財産DDを行うというように、調査が必要な範囲は案件ごとに関連するものを考えながら決めていきます。

また、分野の切り口の他にも、例えば対象会社が複数の事業を行っている場合は、売上の構成比率が大きい事業に関して重点的に調査をするといった、調査対象の強弱を付けることも重要なポイントです。

限られた時間で実施することになるため、全てを完璧に調査するということは現実的ではなく、割くことのできる時間やリソースの範囲で、効果的かつ効率的な調査範囲を立案することが必要となります。

DDの実施内容

DDの実施内容としては、買収対象の会社/事業に関する資料閲覧、質問、インタビュー、現地視察といったものがあります。

特に事業面・財務面・法務面に関する資料の閲覧やそれら資料に関する質問回答は、買手にとって非常に重要な調査手続であり、多くの労力が必要となります。

その他、DD期間のうち1~2日で対象会社の拠点を訪問し、経営者に対するインタビューやキーパンソン・経理担当者等へのインタビュー、工場/拠点視察等が行われることもよくあります。

これらの実施内容や範囲については、DDが本格的に開始される前に、買手と売手の間で協議の上、決めていきます。

その後買手は、DD期間の一連の実施事項を整理し、必要な対応を検討します。

DD発見事項への対応方法

DDにおける調査段階においては、詳細な情報分析の結果、対象会社/事業に関するリスクを識別することが目的となります。

ここで重要になるのがDDの実施により識別したリスクをどのように対応するかについての検討です。

対応策としては以下の4つが考えられます。

■ 買収提示価格(バリュエーション)への反映
– 財務諸表に計上されていない損益や債務を調整して企業価値評価の実施し、買収提示価格に反映させる
– 価格調整条項の設定(クロージング時点における運転資本調整や将来の一定の利益水準を条件とした譲渡代金の一部後払い 等)

■ ストラクチャーの変更
– 過年度において重要な潜在的租税債務が発見された場合に、株式譲渡ではなく事業譲渡に変更することによってリスクを切り離す
– 買手にとって潜在的リスクを切り離せるストラクチャーの検討

■ 最終契約条件への反映
– 表明保証条項その他への反映による売手の責任の明確化
– 識別されたリスクや不備の改善をクロージングの前提条件とする

■ PMIでの検討課題
– 買収後の業務運営における改善策の立案
– 経営統合(オペレーション・拠点・人事制度・IT等)の計画立案

DDの発見事項に対し、上記のいずれでも対応できず、リスク軽減が十分に行えないと判断する場合は、検討を終了して破談となることもやむを得ない状況と言えます。

このように、調査を実施することをもって終了とするのではなく、その結果を活かして適切な対策を打つところまでがDDのプロセスです。

専門家に対するDDの依頼

DDのうち財務・税務・法務・人事といった分野では専門家を活用することが効率的である場合があります。

事業面のDDは、事業の内容は案件ごとに異なることから、対象会社と同じもしくは類似する事業を行っている買手企業が独自のリソースを活用して行うことで十分なケースが多いですが、財務・税務・法務・人事の分野においては、一般的に重要となるポイントがある程度共通しています。それらの分野では会計事務所・法律事務所・コンサルティング会社等の、豊富な実績を有する専門家が多く存在し、アドバイザーとして起用することがDDの効果的かつ効率的な実施に有用である場合が多いと言えます。

報酬水準は少なくともそれぞれ200~300万円程度、大きな案件では1,000万円以上を要するケースもありますが、DD実施の手間やコストのみではなく、その後の事業運営に影響を及ぼし得るリスクを十分に識別する目的でも専門家の起用には価値があります。

もし専門家を起用する際には、全面的に任せるのではなく、スコープや要望はしっかりと伝えた上で検討期間中には頻繁にコミュニケーションを取り、識別したリスクへの対応策まで適切なアドバイスを受けることに意識することが望ましいです。

(参考)ベンダーDD(セルサイドDD)

本稿はこれまで買手目線でのDDについて記述してきましたが、売手側が自社または譲渡対象となる子会社/事業について、情報の整理を目的としてDDを実施することがあります。

例えば、売却プロセスの初期段階において、買手候補によるDD受入準備の目的や、売手からの積極的な情報提供による対象会社/事業の魅力の伝達を目的として、売手が自ら備えることがあります。この準備の作業は、ベンダーDD(またはセルサイドDD)と呼ばれています。

ベンダーDDがよく行われているケースとしては、以下のような場合があります。

  • 一部事業を切り出す案件における情報整理
    – 譲渡対象事業を独立事業体とした場合の過去3~5年間の財務情報
    – 譲渡対象事業の個別単位での将来3~5年間の事業計画
    – 買収後において買手側で手当てが必要となる諸論点(スタンドアローンイシュー)の整理
  • 対象会社/事業の魅力を伝えて可能な限り高い譲渡価格を実現するための概要説明資料(Information Memorandum: IM)の作成

これらの譲渡対象会社/事業に関する情報を、外部の専門家が独立的かつ客観的な観点から、わかりやすく資料にまとめ、ベンダーDDレポートとして作成し、当該資料を買手候補に情報開示していく場合があります。

DDは、買手のみならず、売手側の対応にも時間やコストが掛かるプロセスです。スムーズな情報開示ひいては譲渡実行の確度向上や売却価値最大化のために、専門家を起用することが効果的となるケースが多く存在します。

まとめ

本稿では、M&AプロセスにおけるDDについてその概要と実施内容の重要性について説明しました。

中には時間の制約等があり至急取引完了まで進めなければならない場合があると思いますが、拙速に進めずに、短い期間で効率的かつ可能な限り網羅的にDDを実施することが後々の経営の局面で役に立つ可能性があります

中小企業同士のM&Aでは、案件開始前から知り合いであるケースもあり友好的に進められるケースが多く、そのような場合はDDを省略することもあるが、お互いの将来的な関係維持のためにも実施することが望ましいと考えられます。

当社においても、財務・税務の有資格者がDDおよびその後の対応に関するアドバイスを行っておりますので、ご検討中の状況であれば、まずはお気軽にご相談いただければと存じます。

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