M&Aを活用した事業承継の現状と課題

事業承継

事業承継の準備、できていますか?

日本において中小企業の数は全体の99.7%、労働人口のうち中小企業に勤める数は約7割を占めると言われており、日本経済を支えているのは中小企業と言っても過言ではありません。

一方で、経営者の高齢化および後継者不在に伴う事業承継に関する課題が浮き彫りとなっている現状があります。

実際に、事業承継の促進に寄与すべく、事業承継税制、M&A税制、事業承継・引継ぎ補助金といった国・行政が関わる大掛かりな施策が広まっています

帝国データバンクが全国94万社を対象に社長の年齢を調査した結果、全国の社長(個人、非営利、公益法人等除く)の平均年齢は60.1歳となり、調査を始めて以降(1990年)はじめて60歳を上回りました。(2021年1月現在)

企業の経営者様には精力的な方が多く、「生涯現役を貫きたい」「事業承継なんてまだまだ先の話し」と考えられている方が多いかもしれませんが、ご自身が育ててきた事業を将来長く継続するためには、どこかで次世代につなぐ必要があり、事業承継に関する世間の動きや将来取り得る選択肢について少し考えてみるということも重要と思われます。

事業承継が進まない主な要因

事業承継が社会問題と言われるほど日本全国で今日まで積極的に行われなかった理由は、経営者ご自身の意向で第一線で活躍されてきたという要因の他に、後継者不在という大きな課題があると言われています。

現代ではキャリア選択の自由や都心への人口集中などの背景から、そもそも経営者の子が事業に従事していないことや、事業に従事する子や従業員の中に適切な後継者がいない・いるとしても後継者候補に覚悟ができていないということが大きな問題と言われています。

事業承継が進まない主な要因

● 親族に引き継ぐ意思がない
● 従業員に適当な後継者がいない
● 誰かに引き継ぐには事業の将来性に不安がある

事業承継の現状と政府の取り組み

2017年中小企業白書によると、経営者の高齢化・後継者不足により2025年には約127万件の中小企業が廃業し、650万人の雇用が失われると予測されています。

この状況に対処するために、中小企業庁が主体となって全国に「事業引継ぎ相談窓口」や「事業引継ぎ支援センター」が設置されるとともに、過去には事業承継補助金、経営資源引継ぎ補助金といった事業承継に必要な費用に対する金銭的な支援が行われ、事業承継促進のための施策が近年積極的に行われています。
(本稿の執筆時点では、「事業承継・引継ぎ補助金」が政府の予算案として公表されていますが、応募は未開始の状況です。)

また、税制の面では、平成31年には事業承継に係る相続税・贈与税の特例である「事業承継税制」の改正が行われたり、令和3年の税制改正ではM&Aの買手となる企業の法人税の優遇措置が織り込まれるなど、国・行政による後押しはますます強いものとなっています。

>事業承継税制に関してはコチラ『事業承継税制の適用効果と要件は?制度のポイントや留意点を解説!

このように、統計データに基づくと後継者不在による課題は、日本経済を支える中小企業の廃業、それにともなう経済の大幅な縮小につながると予測され、大規模な対策が検討されています。

事業承継は上記のように注目を集めている分野ではあるものの、実際に取り組むかどうかは当然経営者のご判断によります。

事業承継の対策を考える場合、第一歩目としては、事業承継をする場合の選択肢について整理することであり、以下で記述します。

事業承継には3つのパターンがあります!

事業承継のパターン

● 親族への事業承継
● 従業員への事業承継
● 第三者への事業承継(M&A)

親族への事業承継とは?

  • オーナー経営者の子や親族が事業を承継するケースです。
  • 相続や贈与によって引き継ぐ場合は、承継者が対価を払うことなく、かつ、相続税法上で一定の税負担軽減措置があるため、必要資金の面においてメリットがあります。
  • ただし、現代ではキャリア選択の多様化や少子化の影響で、実際に経営者の子が事業に携わっておらず、継がせることが難しいというケースは少なくありません。

従業員への承継とは?

  • 役員や従業員の中から適切な後継者を選び事業を承継するケースです。
  • 事業のことを良く知る優秀な役員や従業員に引き継ぐことで、経営体制の切替がスムーズ、かつ、他の従業員や取引先からの納得も得やすいというメリットがあります。
  • ただし、親族外の個人である役員・従業員が会社の株を引き継ぐことには、株の取得代金や税金などの資金面で困難が伴う場合があります。

第三者への事業承継(M&A)とは?

  • 親族や従業員以外の第三者に対してM&Aによって事業を承継するケースです。
  • 経営基盤が安定している第三者へ事業を譲渡することで、従業員の雇用維持、既存のビジネスの継続・成長が見込まれます。
  • また、現経営者としても高い金額で株式や事業を売却することが可能な場合が多いです。
  • ただし、M&Aには適切な譲渡先を探すことと、探すことができた場合であっても第三者との売却交渉が必要であり、手間と時間が掛かります

>事業承継に関する一般的論点についてはコチラ『事業承継にあたって検討すべき論点とは?考え得る承継パターンとそれらのメリット・デメリットについて説明します!

第三者に承継するパターン(M&A)が7割超!

中小企業庁が公表するデータによると、東京都事業承継・引継ぎ支援センターで行った550件超の事業引継ぎのうち、71%が第三者承継(M&A)という調査結果があります。

また、従業員数の視点では、譲渡を行った企業の約7割が従業員数10名以下の規模であったという結果となっています。

このデータが示すとおり、多くの中小企業の経営者にとってM&Aによる第三者に対する会社の引継ぎが主要な選択肢となりつつあります。

前述のとおり、M&Aを検討する場合には、譲渡候補先の選定、譲渡の準備、契約交渉といった負担が生じるため難しいと思われがちですが、近年では中小企業によるM&A件数の増加に比例するようにM&Aをサポートする専門家や事業者が増加しており、適切な専門家からアドバイスを受けることによって、M&A取引をスムーズに進めることが可能となっています。

誰に相談したらいいの?M&Aの主な相談先

M&A・事業承継の相談先

● 公認会計士・税理士
● 事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター
● 商工会議所
● 金融機関
● 弁護士・行政書士
● M&A仲介事業者・M&Aコンサルティング会社


M&Aや事業承継のコンサルや仲介の業務を行う事業者の数は増えていますが、取引の最初から最後まで万全の体制でサポートが可能な事業者はまだ多くなく、適切なアドバイザーを探すことが重要なポイントです。

相談相手

メリット

デメリット

公認会計士・税理士

会計・税務の専門家として、中小企業の経営者にとって身近な存在ということもあり、M&Aや事業承継の相談先としては多いとされています。

税務はM&Aにおいても密接に関わる論点であり、その分野で高い専門性を持つことは大きなアドバンテージです。

特に親族内承継も視野に入れている場合は、相続のエキスパートである税理士からのアドバイスは非常に有用です。

M&Aの助言業務の経験がない公認会計士や税理士も多いため、有資格者であってもM&Aに詳しいかどうかは見極めが必要でしょう。

事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター

中小企業庁が運営する公的な事業承継に関する相談機関であり、公平なアドバイスが受けられることがメリットです。

民間のM&A助言事業者との比較では受けられるアドバイスの内容が限定的であり、より踏み込んだ具体的な支援にあたっては、登録する企業や士業専門家の紹介を受けることになります。

商工会議所

経営者へ向けた様々なサポートを実施しており、事業承継についても会員であれば基本的に無料で相談することが可能です。

事業承継に関する専門窓口があるわけではなく、また、適切なM&A専門家の紹介を必ずしも受けられるとは限らないため、商工会議所よりも直接専門家に問い合わせを行う方が近道となる場合もあります。

金融機関

長年の事業上の関係がある場合は親身な相談相手として挙げられます。

大手金融機関の場合は買収金額が数十億~数百億の案件が支援にあたっての最低規模であることが多いです。

また、小規模案件の相談を受ける場合であっても、金融機関から別の専門家や士業の紹介を受けることとなり、結果として報酬が割高となってしまう可能性に注意が必要です。

弁護士・行政書士

法律や行政手続の専門家も事業承継に関する身近な相談相手として期待されることが多いです。

実際にそれらの士業専門家もM&Aに詳しい方は多くいらっしゃいます。

多くのケースではM&Aのプロセスの一部である契約書作成や手続面でのサポートが中心となり、全面的なサポートを依頼されたい場合には、結果として他の専門家を起用する必要が生じ報酬が高額になります。

また、部分的なサポートであっても法務面の専門的アドバイスを受けるには相応の相談料が発生することに注意が必要です。

M&A仲介業者・M&A専門コンサルティング会社

大手のM&A仲介業者やM&A専門のコンサルティング会社は存在し、確かにそれらの会社はM&Aに関するノウハウや買手・売手候補のネットワークの面では秀でています。

大規模な事業者であるがゆえに数十億~数百億円の大型案件に注力し、小規模案件は対象にしていないことが多いことや、対象とする場合であっても報酬が高額であることがデメリットとして挙げられます。

また、買手企業と売手企業との間の仲介を主な業務内容としている仲介業者は、売手にとっての売却価格最大化よりも、案件の短期かつ確実な終了に主眼を置き、アドバイザーとしての機能が十分でない場合もありますので、ネットワーク力のみではなくM&Aに関する専門性や担当者の誠実性を良く見極めることが重要です。

事業承継はプロに相談することが大切!

事業承継は、M&Aを活用した第三者への株式や事業の譲渡がトレンドになりつつあります。

一方、M&Aに関する経営者の理解度や小規模のM&A取引において助言を行う事業者の質は発展途上であると言われています。

M&Aの実行には、譲渡候補先の選定、譲渡プロセスの準備、契約交渉、株式・事業の引渡し等、多くのプロセスを踏む必要があり、確かに困難を伴います。
そのため、経営者おひとりで抱え込むことはせず、専門的な知識と経験を有する専門家の起用することが望ましいと言えます。

当社、S&Gパートナーズ株式では、税理士・会計士の財務・会計分野のプロフェッショナルであり、かつ、M&A歴10年以上のM&Aに特化した専門家が依頼者様の利益を最大化すべく、M&A・事業承継を全プロセスにわたって支援しております。

S&Gパートナーズの特徴

● 税理士・公認会計士による専属的なサポート
● M&A経験10年以上!経験豊富なアドバイザーが対応
● 検討開始~取引完了までワンストップで対応可能!

一部の優遇措置を受けるためには認定支援機関の関与が必要です

事業承継税制や一部の補助金には、経済産業省が認定する経営革新等支援機関(認定支援機関)の関与が必要なものがあります

S&Gパートナーズでは、グループの税理士事務所にて認定支援機関として税制優遇措置の適用および各種補助金の需給に係る支援を行っておりますので、M&A・事業承継に関するご相談とセットでの支援を提案させていただくことができます。


M&A・事業承継に関する相談は
初回無料で受けております。

また、手数料についてはこれまでの知識・経験を活かした効率的なアプローチを採ることを前提に業界最低水準の設定としています。

まずはお気軽にご相談ください!

会社(事業)いくらで売れる?企業価値評価に関するご相談もお気軽にお問合せください!

企業価値評価とは、M&Aにおける譲渡価格決定の基となる会社の価値を試算するプロセスのことであり、M&Aの買手はもちろん、売手の方も自社の価値を見積っておくことは譲渡の準備として非常に重要です。

M&A・事業承継のご相談をいただいた方には、初回の企業価値シミュレーションを無料で実施しています!

>企業価値評についてはコチラ『企業価値評価(バリュエーション)とは?主な評価手法や実務上のポイントを解説!

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